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バックスクワットでハムストリングスは筋肥大するのか⁇

バックスクワットでハムストリングスは筋肥大するのか⁇

バックスクワットはベンチプレス・デットリフトと並ぶBIG3と呼ばれる王道トレーニング種目です。

パワーリフティングの種目でもあり、オリンピックウエイトリフティングではスナッチ・クリーン&ジャークを伸ばすための1番重要とも言える補強トレーニングです。

そんなバックスクワットは脚の中でも特に大腿四頭筋の筋肥大に効果的ですが、ハムストリングスの筋肥大には深く繋がらないと考えられています。

しかし、今回はバックスクワットとハムストリングスの筋肥大の関係について面白い論文を見つけたので紹介していきたいと思います!!

※今回の論文でのスクワットは僧帽筋上部で担ぐ「ハイバー」スクワットか肩甲骨の下角と三角筋後部で担ぐ「ローバー」スクワットかは明記されていませんでした。
「ハイバー」は主に大腿四頭筋が主動筋になりますが、ローバーの場合、主にハムストリングスと臀筋群が主動筋になるので、恐らく「ハイバー」ではないかと筆者は考えました。
よって、今回の記事は「ハイバー」スクワットという形で
読み進めていって頂ければと思います。

Trindade TB, Neto LO, Pita JCN, Tavares VDO, Dantas PMS, Schoenfeld BJ, Prestes J. Pre-stretching of the Hamstrings Before Squatting Acutely Increases Biceps Femoris Thickness Without Impairing Exercise Performance. Front Physiol. 2020 Jul 7;11:769. doi: 10.3389/fphys.2020.00769. PMID: 32733274; PMCID: PMC7358463.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32733274/

結論:バックスクワットでハムストリングスは筋肥大する可能性がある。

Schoenfeld等(2020)の研究結果では、バックスクワットの各セットの直前にハムストリングスを伸ばすことで、スクワットのパフォーマンスを損なうことなく、大腿二頭筋(ハムストリングス)の厚さを急激に増やすことができるとされています。

そもそもバックスクワットのフォームはバーベルがミッドフットライン上(足の中心部分)の軌道を通る様に上体を出来るだけ真っ直ぐに保ちながら
しゃがむ為、ボトムポジションでは膝が前に出ます。
その結果、大腿四頭筋の筋活動が有利になります。
バックスクワットのフォーム上、上体を前に傾けないのでハムストリングスの長さもあまり変わらず、
筋肥大には繋がらないとされています。

しかしSchoenfeld(2013)によると、ストレッチをした後の大腿二頭筋の厚さの急激な増加は、ストレッチによって誘発される血流制限とその結果としての代謝物の蓄積、筋細胞の腫れを促進する要因いわゆる「パンプ」に起因する可能性があると報告しています。

被験者の情報

被験者は5年のレジスタンストレーニング経験を持つ若い男性が対象で、
バックスクワットのセットの前後でハムストリングスのストレッチを行ったグループとそうでないグループに分けられました。

研究の進め方

ストレッチをしたグループとストレッチをしていないグループで分けられ、
スクワットの重量・セットの設定は10RMで3セット(10回できる重量)。

しゃがむ際のスピードも決められており、テンポで行われています。
テンポとは決められた動作スピードで動きを実行する事です。
今回の研究では2秒かけてしゃがみ2秒かけて立ち上がるスクワットで行われています。

インターバルはセット間の休憩時間・ストレッチ時間・ストレッチ終了から次のセットまでのインターバル時間のトータルで120秒間あります。
肝心のストレッチ時間は40秒間です。

トレーニング前後の筋肉の厚さ比較

ストレッチをしたグループとそうでないグループのトレーニング前後の大腿四頭筋(中間広筋は除く)・ハムストリングスの厚さを調べた結果、両方のグループともに増加しており、ストレッチをしたグループではしていないグループに比べて優位な増加が見られています。

この事から、バックスクワットの前にハムストリングスを伸ばす事は、
大腿四頭筋のパフォーマンスを低下させる事なく、ハムストリングスに刺激が入っている事が証明されています。

筋電図(EMG)とトータルトレーニングボリューム(TTV)

ストレッチされたグループとそうでないグループのEMG・TTV(TTV=セット数×レップ数×重量)を比較した所、ハムストリングスのEMGは増加しておらず、
TTVに関しても両グループ共に違いがありませんでした。

この結果から筆者なりに解説すると、ハムストリングスのEMG活動が増えていればスクワットの時にしっかりと動員されているという事になるのでTTVも上がるはずです。
しかし、実際の所EMGもTTVも増加していなかったのでハムストリングスの厚さ増加には繋がるが、スクワットそのもののパフォーマンスを増加させる事にはあまり関連性がないのではないかと思いました。

まとめ

今回はバックスクワットとハムストリングスの筋肥大の関係性について論文を参考に
書いていきました。

まとめると
①各セット間でのストレッチ後は、大腿四頭筋のパフォーマンスを落とす事なくハムス
トリングスの厚さが増大していた。

②大腿四頭筋のEMGはストレッチの有無関係なく両グループ共に増加していたが、ハムストリングスのEMGは増加していない。

③TTVも両グループ共に違いはなかった事から、ハムストリングスのストレッチはスクワットのパフォーマンスを上げる事には繋がらない。

慢性的なハムストリングスの筋肥大に繋がるかどうかはまだ解明されていない為、今後の研究に期待です。

実際、ハムストリングスを鍛える目的でスクワットを行う人は多くないと思いますし、
ハムストリングスを鍛えるならデッドリフトなどの強い股関節伸展動作で重量を扱える種目を選択した方が効率的だと思います!!